2日前の朝、ツイッターを開いたらとんでもないニュースが目に入って、正直まだ信じていない。
三宿にある大好きなクラブ、webが閉店するという。
私などよりも数億倍、このお店に思い入れのある方々の、悲しみのツイートがどんどん流れてくるのを眺めていた。
三宿webは、大人になって初めて出会った、魔法のような場所だった。
もしかしたら初めてwebに行った日が、私が大人になった日だったかもしれない。
2012年4月13日金曜の夜、初めてwebに行った。
ライブハウスはそれなりに色々通ったけれど、クラブには行ったことがなかった。
自分がクラブに行く日が来るとも思っていなかった。
当時は就活中で、この日の夕方に一番行きたかった会社から不合格通知を受け取り、捨て鉢になっていた。
なぜか絶対受かると思っていたし、その会社で働く自分しか想像していなかったので、面食らったし、プライドがズタボロになって、
何だかちょっと不良みたいなマネをしてみたくなった。
それで親に「ちょっと朝まで出かけてくるわ」という意味不明のキメ台詞を言い残して、
初めて降り立つ池尻大橋でブルブル震えていた。
ちょうど、NONA REEVESにのめり込み始めた時期で、このような↑イベントをやると知っていたので、
勇敢にもたった一人で乗り込んだのだった。当時21歳。
当然、年齢確認をされる(その後も4~5年ほどIDを求められ続けた、童顔か?)
扉を開けると、見たこともない、夢のような空間が広がっていた。
友達もいないので一人でグレープフルーツジュースを飲んでいる、それだけで楽しかった。
私のような明らかに遊び慣れていない客でも許容してくれるような、緩い空気感が素敵だった。
クラブって、サマソニみたいに水着のギャルとかを侍らせた怖そうなお兄さんがいっぱいいると思ってたけど、全然違った。
かっこいい音楽がでかい音で流れている、ただそれだけのピースフルな場所だった。
他のクラブにほぼ行ったことがないので分からないけど、webは恐らく狭い。
記憶にあるwebは大抵、満員で歩くのも一苦労な感じだった。
ドリンクに並んでいたら、目の前に小松さんがいた!
DJしている姿を遠くから眺められたらいいな~くらいの気持ちで来たので、あまりの近さに度肝を抜かれてしまった。
隣に座った気のいいお姉さんに「ほら、小松くんいるよ!」とか言われながら、蚊の鳴くような声で話しかけたりした。
小松さんも、郷太くんも、奥田さんも本当に気さくで、優しかった。
朝まで優しい時間が続いて、ふわふわした気持ちで家に帰った。
着ていた服を洗濯したら、このたばこの匂いが消えたら、夢が覚めてしまうようで、洗濯したくなかった。
数々のバンドを追っかけて来たバンギャ(自称)の私からして、好きなミュージシャンとこんなに近くで長い時間おしゃべりできる場所があるなんて、とんでもなく信じられないことだった。
ここから、頻度は多くないけど、webにちょくちょく遊びにいくたび、魔法のような夜が積み重なっていった。
就職してから、キツイ仕事でも場所が池尻三茶あたりというだけでウキウキした。
わざわざ遠回りしてwebを一目見てから帰社したりしていた。
お酒を飲めない私にも、生絞りの超美味しいグレープフルーツジュースが有難かった。
スパムおにぎりも最高だった。
2~3か月後、2度目にwebに行った日、小松さんと目が合うなり、
「お! 就活決まった?」
と言ってくれた。
この世に神はいる、と思った。
それ以降も会うたびに「仕事頑張れよ!」と背中をポーンとしてくれて、
何度も何度も仕事を辞めようと思ったけど、
大げさじゃなく小松さんのこの一言だけで、ここまで踏ん張ってこれた。(休職してますけど)
すっかりwebのトリコになり、友達とワイワイしに行ったり、帰りにみんなで池尻のマックで朝ごはんを食べたり、百発百中で楽しい夜だった。
会社で深夜まで残業して、3時くらいにタクシーでwebに駆け込んだりもした。
クラブでshazamをするのはカッコ悪い、と一流クラバーの人たちは言うけれど、
私のようなひよっこクラバーは一晩中、shazamしまくっていた。
堂島くんが2012年くらいに掛けていた、ceroの「ワールドレコード」。
奥田さんが掛けていたthe bird and the bee。
冨田さんが掛けていた冨田ソロや、Chilly Gonzales。
小松さんが満面の笑みで掛けていた「ディスコの神様」。
郷太くんが1曲目に掛けたキリンジ「風を撃て」。
(↑この直後にヤス脱退が発表された。もしかしたら郷太くんは知っていたのかな、と勝手に想像した)
ノーナだけじゃなくて、これまた大好きなDJ FUMIYAくんを聴きに行ったり
天才DJのプレイを目の前で見れる日が来るとは!?!?!?!?
頭に血が上るほど興奮した。2回くらいしか行けなかったけど。
DEKITもめちゃ楽しかったし、年越しイベントのようなやつも最高だった。
相変わらず一人で行くのが全然怖くなかった。
奥のロッカー手前の踊り場みたいなところに一人で座っていると、郷太くんが声をかけに来てくれたりして、いくらでも楽しめた。
昨年11月に遊びに行ったのが最後。
お酒は飲まないわ、大した頻度で行かないわ、全くいい客でない私ですら、
閉店の知らせはこんなにも悲しい。
コロナの影響以外にものっぴきならない事情があるということだから、webが大好きな私たちは、
そうですか。残念です。今までありがとう。
と言うことしかできないんだろうか。
宇多丸さんもラジオで言っていたそうだけど、お金だけの問題なら、クラファンなどでいくらでも集まるだろうし、
支援Tシャツも2枚買って「これでwebは大丈夫だろう!」と勝手に思っていたところだったけど、
ただのファンに今できることが何もない。
こんな悲しいことがあるのか、と思った。
大好きなwebと比べるつもりは全然ないしそもそも論点がズレるのでここからは別のお話。
ふと自分や世間一般の仕事についても考えたとき、(モノづくりという分野において)
もし単純に、お金が足りませんので廃業にします!
という事態になるんだとしたら、
今の時代においては少し違和感があるかもしれないと感じた。
バンドなどの存続も同じで。
極端な言い方になるけれど、「お金が足りない」が理由で何かをなくしてしまおうとする際には、そのモノや人を応援する・必要とする客がいる限り、
まず一番に「助けてくれ!」と発信するのが、今の時代にしっくりくるな、と思う。
コロナの影響をもろに受けてしまう業種もいれば、
幸いにもそこまで直接的な打撃を受けていない業種もある。
後者がお金を落とすことで"好きなモノを守る権利"が、少しずつ当たり前になってきているように思う。それこそクラファンのように。
でも正直、クラファンもまどろっこしいなと思う。
見返りはいりません。ただ存続してほしくてお金を払いたいだけなので。
お布施みたいな制度でいい。
…
と色々考えて気を紛らわそうとしたけど、無理でした。
webは本当に大好きな場所だから。また次webに行ける日はいつかなーと年中楽しみにするのが当然の日々だった。
夜中におしゃれして。
何度でも言うけど、webのために今からファンができることってないんでしょうか?(しつこい)