明るいうつ病患者の休み方

失敗記録とその言い訳集(?)。パニック障害・抑うつの症状と治療法については素人知識です。

夢しか娯楽がない

抗うつ剤を始めてからというもの、何度も書いてきたように、土日は猛烈な眠気に抗うことなく、ものすごい勢いで寝続けた。

長らくファンの、ART-SCHOOL木下理樹さんも、いま自分と似た症状に苦しまれていて、夢についてよくTwitterに書いておられるから、うつ病患者にとって夢は少しスペシャルな存在なのかもしれない。

というのも、うつ病患者にとって、娯楽は夢しかないのだ。

自分の場合、それは休職中が最も顕著で、来る日も来る日も寝て、眠って、時々食事、また寝て昼夜逆転、という感じの生活なので、「夢以外ぜんぶ昨日と一緒」という日々が続いた。

この頃はあらゆる刺激への耐性も落ちていたので、テレビは苦手だし、本もがっつり集中して読み込む系のものはだめ、

YouTubeで3分くらいのコントを見るか、NAVERまとめで毒にも薬にもならない雑学を流し読みすることしかできなかった。

Jリーグもコロナで中断しているし、ライブもない。(あったとしても出かける体力はなかった)

 

眠ってばかりの生活になると、まず単純に夢を見る頻度が増えた。当たり前だ。

そして目覚めてからも夢をよく覚えている。

夢は、その日あった出来事を脳が整理している過程だと聞いたことがあるけど、家から出ず寝てばかりいる人間には、「その日あった出来事」などない。

じゃあ何が夢に出てくるのかというと、私の場合、昔の記憶。実家に帰ってきていることもあって、小学校や中学校の通学路などがやたら出てきた。

そして大変困ったことに、そんな夢の中で最も主役を張ることが多いのが、初恋の人だった。

それはもうしつこいくらいに。毎晩毎晩、手を替え品を替え。

12歳の頃に(かなり)好きだったYさんは、寝込む生活以前もそれなりの頻度で(半年に一度くらい)夢に出てきていたわけだけど、29になって尚、毎晩毎晩出てこられては、こちらも困る。

 

夢に出てきた人を好きになってしまう経験はないだろうか?

私はこれの典型で、昔からYさんが昔のままの姿で夢に出てきては(必ずしもhappyな役どころではない)目覚めたあと、今の姿さえ知らないYさんのことを悶々と何日か考え続け、忘れた頃にまた出てくる、の繰り返しだった。

ある時思い切ってInstagramで検索したところ見事にヒットして、彼は結婚し子どももいることを知った。

それでもまだ、出てくる。

もうこの呪縛から解放されたいと思い、病気になって実家に帰ってきたその手で、大事に机にしまっておいたラブレターfromY を、開かずに捨てた。

それでもまだ出てくる。

なんなんだこの人は。

出来心で、今使っているスマホのメールボックス内を昔のYさんのアドレスを検索してみた。さすがにヒットするわけないと思ったら、当時使っていたpcメールが同期されていて、17年前のやりとりが見れた。

Yさんから届いていたメールの内容はこうだった。

「テスト前だから、勉強してたよ!」

自分が何と送ったかは見られなかったけど、どうせ「何してるの?」とか「今ひま?」とかしょうもない内容であることに疑いない。

おいおい。めっちゃ煙たがられてんじゃん!私!

・だから返信遅くなりました(けどごめんとは全く思ってない)

・特に話すこともないので発展性のない短文だけとりあえず送る。

衝撃だった。めんどくささが全開だよYよ!!

もっと優しく楽しげなメールのやりとりをしていたと思い込んでいた。なぜか。まじでなぜなんだ。

このメールを見て私は、17年の呪縛からようやく解き放たれた気がした。

時というのは恐ろしく、私は長い年月をかけ、Yさんを美化しすぎていた。彼とはほんの短い時期、付き合って(?)いて、別の中学に進んでからも私はYさんをずっと好きだった(と思い込んでいた!)

だから今でも度々夢に出てくる、特別な存在なんだ、今世で結ばれることはなかったけれど…的な美談が脳内に蓄積され、17年という時を経て、びくとも動かない"信念"として私の脳内に鎮座していたわけだ。

その信念の地層が、あの冷淡(な中に少年の気遣いすら感じされるところが切ない)なメールの一文を見たことで、音を立てて崩れていった。

それ以来、Yさんは夢に一度も出てこない。

 

夢については、もう一つ興味深いことがあった。

病気になる以前からしばらく恋人がいないのだけど、それでも元気だった頃は、性欲はそれなりにあったと思う。

セクシーな夢もよく見ていた。

それが病気になって、ぴたりとなくなった。

初めてパニック発作が起きた時、焦ってとにかく気を紛らわそう!と思ってお下劣なサイト(サイゾーウーマンとか)を覗いて見たけど、まったく脳が受け付けなかったのをよく覚えている。

夢に関してもそうで、

これだけ長い時間寝て相当な作品数の夢を見ていても、その中にひとつも色っぽい夢がなかった。

この変化にあるとき気付いて、自分は本当に性欲が減退している、ああ、本当に抑うつ状態なんだ!と妙に納得した(恥ずかしくて主治医の先生には言ってないけど)

それが、復職する少し前くらいから、たまーーの頻度でお色気な夢を再び見るようになった。

これは自分にとって、回復してきたことの証として、かなり自信を与えてくれた。

おかげで復職してからの最近は、無理せず、楽しくそれなりに働いている。

 

ただ、元気になった今こそ改めて思うけれど、

パニック→抑うつと経験して、今年30で、もう、自分に恋愛は無理だと。何度考えても無理だと。

まずドキドキすることに耐えられないし、いつ発作が起きるか分からない不安の中でデートなんてできない。さらにこの期間考え抜いた結果である「感覚」についての一家言もあるし、好きになった人と感覚不一致だったときのショックを乗り越えられる自信がないし、とにかくこの身体・この精神では些細なダメージでもイコール死を表すので、失恋なんてした日には自分がどうなってしまうか分からない。

今は理解ある優しい母と住んでいるけれど、いつまでそうしていられる?

そろそろ人生考えないとマズい歳になってきている。

あれほど心酔していた借金玉さんの本だけど、唯一腑に落ちなかったのが、

「あなたいつの間に結婚してんねん」だった。

発達障害者はどうしたら結婚できるんですか?教えてスゴいひと